これは少し前の話。
理科の授業で顕微鏡の使い方を扱う時がやって来ました。
これまでの授業の中で、顕微鏡の各部の名称や使い方の流れは説明済み、、昨日確認したばかりだし覚えてるだろう、、、と思ったのですが、しっかりと思えていたのはほんの数名、、笑
まあ、顕微鏡の名称なんて、ぶっちゃけどうでもいいんです。
顕微鏡を使ってみることができるなら!
というわけで、私が活動している学校には顕微鏡が4台ありまして、それをグループに分けて観察させるともう制御ができないカオスの状態になってしまうので、ここは一点集中だ!とその日出席していた生徒を4人ずつのグループに分けて、1対4で観察実験を行うことにしました。
欲を言えば、顕微鏡で観察したものをスケッチして、さらに友達とスケッチを見比べる、、、くらいまではやりたかったんですけれど、鉛筆も持ってない子が結構いて、スケッチは断念。。
※生徒は皆、ボールペンを使っています。
当然、生徒は皆玉ねぎのことを知っています(当たり前か)。だから、玉ねぎを持って「これはなんだ?」と言ったら生徒たちは当然「玉ねぎ」と答えます。
でも、じゃあ玉ねぎとネギとニンニクが同じ仲間になるってところまではわかっていません。そもそも「分類」のことについてしっかりと時間を取っていないので、なかなか共通点と相違点を挙げることに慣れていないのです。
こればっかりは一日二日でできることではなく日々の学校等での「比べる」訓練をしていかないと身につきません。
まあ、そんなことは今回は置いといて
今回は玉ねぎの観察をしていきます。
玉ねぎって層状になった燐葉と呼ばれる葉(葉っぱには見えないかもしれないけれど)が可食部になってるんです。
そんな玉ねぎを輪切りにして葉の表側(普段見ている方は葉の裏側になる)の部分の一部分をカッターで切り取ってみると薄いシート状の組織を取り出すことができます。
そして、そのシート状になったものをスライドガラスにのせて、水を数滴垂らしてからカバーガラスで閉じて、プレパラートの完成!
ちなみにプレパラートはい英語では prepared glassと言って、直訳で「準備されたガラス」という意味になります。資料を置いて観察可能な状態ですのでまさに「準備された」ガラスですね!
そしてプレパラートの用意ができたら今度は顕微鏡の使い方の指導になります。
この観察実験を行う前に、すでに顕微鏡の各部位の名称と使い方を説明して、実演済みなのですが、生徒たちはどこまで覚えているのやら・・・
まあね、、使い方はいいんですよ。覚えていなくても。「顕微鏡で玉ねぎを見る」という目的さえ果たしてくれればそれでいいんです。。。
でも、彼らの取っては顕微鏡を使って何かを見るというのは人生初体験!もちろん玉ねぎだってなんだって顕微鏡を通して見たことはないので、どれが玉ねぎかもわからないです笑
これは日本の生徒たちも同じですね。
気泡を見つけてピントを合わせて
「見つけた!!!」
て言ったのが「ただの空気」なんてことはよくあることです。
でもそういう経験を繰り返して
「これは空気だから、他のものは、、、これはレンズの中のチリかな??」
と言ったように試行錯誤の結果がこれからの観察に役立ってくるんですよ。
そんな試行錯誤の積み重ねがすぐに目に見えてくるのがこの顕微鏡観察なんです。
そもそも顕微鏡なんて、レンズの構造からしたら複雑ですが、使い方なんでそんなに難しくないですよね。
1.プレパラートを作って
2.対物レンズを決めてから
3.ステージにのせて
4.光量を調節しつつ、調節ネジをいじりながらピントを合わせる
詳しく書くともう少しありますが、基本的にこんな感じです。
今回はクラスの生徒を4人ずつ呼んで対応しました。30人ちょっといたので4人×9グループとなかなかハードな授業?でした。
そもそも顕微鏡の数もないですので、全員に対応させてたらとてもじゃないですが、管理しきれません。無理です。
観察が終わった子は早々とどっかに行ってしまったり教室に残ったりして、無法地帯と化していたようですが、まあいいでしょう笑
彼らがこの「顕微鏡を使っていた時間」をいつまでも覚えてくれることを願うばかりですわ。
「モノがなくてもできることはある」
という言葉がありますが、やはりそれでは限界があります。
ソロモンの子どもたちはとっても情報に飢えています。なんでも目に入ったもの耳に入ったものは吸収しようという情報に対して貪欲なところがあります。(同じくらい食欲もあるのですぐにお腹すいたと騒ぎ始めますが、、)
そんな彼らに取って、顕微鏡を通して見た世界というのはそれはそれは衝撃的なものなのです。
虫眼鏡で葉っぱを観察しただけでも盛り上がるんですから。
残念ながらソロモンにはしっかりと顕微鏡の扱い方や資料の作成方法を学んできた先生は少ないです。ソロモンの大学で教員免許を出している学部が教育学部しかないというのも大きな要素の一つなのかなと思います。小学校に関しては顕微鏡なんかありません。あるのかもしれないですけれど、学費が高い私立の学校だけになります。
そんな環境の中で
「顕微鏡を使うことが一体どれだけの価値があるのか」
と言われたらおしまいですし、私自身もしっかりとした答えが見出せているわけではありません。
それでも一人の理科教員として、大学で化学を学んできた一人として、顕微鏡との出会いは大きかったと思います。
顕微鏡はただの実験器具ではありません。
顕微鏡は人間の眼の分解能(解像度)を強化することができるものなのです。
それはつまみにくいものをつまめるようにできるピンセットや重たいものを持ち上げるようにできるてこのようなものと同じなのです。アルキメデスがテコの原理を唱えて地球を動かそうとしたように。
視覚によって手に入れることのできる情報が膨大です。
それこそ目をつぶっていたら慣れ親しんだ家の中もうまく歩けないくらいです。
そんな視覚に圧倒的な解像度を与えるわけですから、それこそ圧倒的な情報が手に入れることができるんですよね。顕微鏡が普及する前は貴族のようなお金持ちしか使うことができなかったくらいですから、それだけ面白いし、世界を広げる可能性があるわけです。
ちょっと話が逸れましたが、だからこそ、顕微鏡で玉ねぎを観察して頭が良くなるわけではないですが、顕微鏡観察に力を入れていきたいと思っています。
最近いつ顕微鏡を使いましたか?
きっと学生以来だという人も少なくないと思います。
たまには顕微鏡を覗いてミクロの世界を見てみませんか?
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